iOS 14 の新機能まとめ

Appleは日本時間9月16日にiPhone/iPad向けの最新OS "iOS 14/iPadOS 14" の正式版を発表しました。今回はそれらの新機能をまとめてみます。

App Clip

外出先でサービスを使いたいとき、Appをインストールせずにその場で高速に利用できるようになります。

App ClipはNFCタグにiPhoneをタップすることで素早く起動できます。他にはQRコード、メッセージ、Safariで表示したリンク、マップアプリ、App Clipコードから開始することができます。

AppがAppleサインインに対応している場合、素早くログインができ、そのままApple Payを使用してApp内で決済を行うこともできます。

App Clipからアプリ全体をインストールすることができ、また一定期間App Clipからインストールが行われなかった場合はそのApp Clipは自動的に削除されます。

 

プライバシー

Appleはプライバシーに力を入れていて、今回のiOS 14でもこれらの機能が強化されています。

App Store

App StoreではAppをダウンロードする前に、そのアプリのプライバシーに関する方針を理解するために情報を確認できます。

・カメラとマイクのインジケーター

アプリがiPhoneのカメラやマイクを使用しているとき、画面の右上に常にインジケーターが表示されるようになりました。コントロールセンターを開くと、どのAppがカメラやマイクを使用しているか、また最近それらを使用したAppが何かを確認できます。

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(左から順に マイク使用中、使用中のコントロールセンター、使用後のコントロールセンター)

 ・Appleサインインへの切り替え

対応しているアプリで、既にログインしている状態から「Appleでサインイン」に簡単に切り替えられます。これによって、既に使っているアカウントはそのまま、管理するパスワードを一つ減らすことができます。

・大まかな位置情報

Appが現在地を要求しているとき、正確な位置情報ではなく大まかな位置情報を渡すことが可能になりました。正確な位置情報が必要ないアプリ、例えば地域別でコンテンツが切り替わるニュースアプリやラジオアプリ、天気アプリなどで使うと便利そうですね。

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・指定した写真のみへのアクセス許可

サードパーティ製アプリが写真ライブラリにアクセスしようとした時、iOS 14では選択した画像のみの読み込みをアプリ毎に許可することができるようになりました。

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・プライベートアドレス

Wi-Fi接続時にiOSバイスMACアドレスを隠して接続することができます。この機能を使用すると、複数のWi-Fiネットワーク間でデバイスのトラッキングを行いにくくすることが可能です。

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ホーム画面

・ホーム画面のページを隠す

ホーム画面上に表示しておく必要がないページは配置を残したまま非表示にしておけるようになりました。この機能は単体で使用するより、次のAppライブラリと組み合わせて使用すると良いと思います。

 

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・Appライブラリ

Appが自動的にカテゴリ分けされるので、ホーム画面に色々なアプリが並んでいてどこにどのAppがあるのか分からなくなる確率が下がりました。

 

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ウィジェット

iOS 13以前のウィジェット機能とは大きく異なり、ホーム画面に自由にウィジェットを配置できるようになりました。また、ウィジェット自体も新しくなっています。

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ロック画面のウィジェット / ホーム画面のウィジェット / ウィジェット設定(天気)

 

ピクチャ・イン・ピクチャ

Safariや対応したAppでの動画再生中に、ピクチャ・イン・ピクチャのボタンをタップするかホーム画面に戻ると動画を再生した状態で別のAppを使用することができます。また、動画を非表示にして音声のみ再生しておくことも可能です。

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通常再生中 / PIP開始 / PIP中のホーム画面

 

バナースタイルの着信画面

iPhoneの使用中にかかってきた着信をコンパクトに表示できるようになりました。以前のように画面全体を覆うことなく着信を知らせてくれます。

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着信中

メッセージ

・人やグループの固定

よく使う人、グループ等をメッセージAppの上部に固定しておけるようになっています。

相手からの反応があった場合も気づきやすくなりました。

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メッセージのピン固定
・名前の言及

グループでの会話中、特定の人物へメッセージを送れるようになりました。 自分宛てにメッセージが届いた時のみ通知するように設定することも可能です。

・グループ写真

メッセージグループにアイコンの写真やミー文字を追加して、グループを識別しやすくなります。

・ミー文字の追加

ミー文字に20種類以上の新しいスタイルが追加されます。

 

マップ

・自転車と電気自動車用の経路案内

マップAppの経路案内に自転車用と電気自動車用経路の案内が加わりました。自転車用ルートでは標高や混雑状況、階段や急勾配のある場所が分かり、電気自動車用経路では途中に充電ステーションがある経路を選ぶことができます。(対応した自動車が必要)

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自転車ルート。私が検索した条件では使用できませんでした
・ガイド機能

マップにガイド機能が追加され、世界各地にある注目の飲食店やショップ、見どころなどをガイドしてくれます。気になるガイドを保存すると、最新のおすすめをいつもチェックできます。

 

翻訳

Apple製の翻訳アプリが追加され、11の異なる言語での会話に対応します。

オンデバイスモードを使用すると、翻訳アプリを完全にオフラインで使用できます。ダウンロードした言語でアプリの全機能を使用できる上、iPhoneをオフラインにしなくても翻訳のプライバシーが守られます。

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Safari

・パフォーマンスの向上

パフォーマンスが向上し、JavaScriptのパフォーマンスはAndroidChromeを使うときの最大2倍高速です。

・翻訳

Safariで他言語のページを閲覧する際、Safari内で翻訳を行うことができるようになりました。ただし、開始当初は米国とカナダ限定の機能となります。

・プライバシー

Safariでのブラウジング中にプライバシーレポートを確認すると、サイトがプライバシーをどう扱っているか、使用されたトラッカーなどの確認ができます。

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キーチェーンに保存されているパスワードが簡単に推測できると判断された時や、保存されたパスワードの流出が確認された時にデバイスが通知してくれます。

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FaceTime

・画質の向上

ビデオ通話の画質が向上し、対応しているデバイスでは最大1080pの解像度で表示されるようになりました。

・手話の検出

手話を使っているユーザーをFaceTimeが検出し、グループFaceTime通話中にその人が目立つように表示されます。

・視線の補助

カメラではなく画面を見ている時に相手と視線を合わせやすくなるよう、FaceTimeがサポートしてくれます。

 

Siri

・コンパクトなデザイン

以前のような全画面を覆う表示ではなく、必要な時に小さく表示されるようになりました。

Appに表示されている内容を確認しながらSiriに話しかけることができます。

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・翻訳

Siriを使用して65言語の翻訳が可能になりました。日本語からは英語、中国語、台湾語、韓国語の翻訳に対応します。

・オーディオメッセージの送信

Siriを使ってオーディオメッセージを送信できるようになりました。

・より多くの知識

Siriがインターネットから情報を引き出し、更に幅広い質問に答えられるようになりました。(英語で利用可能)

 

CarPlayとCarKey

CarPlayホーム画面の壁紙

CarPlayのホーム画面に壁紙の選択肢が追加されます。また、新しいカテゴリーのアプリに対応し、駐車、電気自動車の充電、食事の注文などの新しいアプリに対応します。

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・CarKey

CarKeyを使用すると、対応する車でiPhoneからロック解除とエンジンの始動が可能になります。また、家族や知人にiMessageで鍵を一時的に共有できます。(iPhone XS/XR以降に対応)

CarKeyはiPhoneのバッテリーが切れた後、最大5時間まで動作します。

 

AirPods

・空間オーディオ

AirPods Proが空間オーディオに対応し、サラウンドサウンドが楽しめるようになります。頭の向きを変えたり、デバイスを動かしてもサウンドがついてきます。

・自動切り替え機能

iPhoneAirPodsを使用して通話をした後にiPadで動画を見ようとした時などに、自動でAirPodsの接続先が切り替わります。この機能はiOS 14/iPadOS 14を搭載したiPhone/iPadmacOS Big Surを搭載したMacで利用できます。(第二世代AirPodsAirPods Pro、一部のBeatsヘッドフォンで利用できます)

・ヘッドフォン調節

聞こえ方の違いや好みに合わせてオーディオが調節され、音楽や通話などをはっきりと聞き取ることができるようになります。(第二世代AirPodsAirPods Pro、EarPods、一部のBeatsヘッドフォンで利用できます) 

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・バッテリー残量の通知

AirPodsのバッテリー残量が少なく(10%/20%)なると、iOSバイスに通知が表示されます。

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AirPods Pro Motion API

AirPods Pro Motion APIを使用すると、デベロッパの方はAirPods Proの方向、ユーザーの動きの加速度や回転速度にアクセスできるようになります。フィットネスアプリやゲームアプリに最適です。

 

ARKit 4

・Depth API

新機能としてLiDARスキャナを活用した”Depth API”があり、現実空間とオブジェクトを自然に重ねる事が可能になりました。

なお、このDepth APIはLiDARスキャナを搭載したデバイスにのみ対応しているため、iOS 14公開当初の対応端末は 第二世代iPad Pro 11インチ、第四世代iPad Pro 12.9インチ に限られます。ですが次期iPhoneの一部のモデルがLiDARスキャナを搭載すると噂されているので、使用可能なデバイスはこれから増えていくでしょう。

・フェイストラッキング機能

ARKit 4では、フェイストラッキング機能が拡張され対応するデバイスがA12 Bionic搭載デバイス (iPhone XS/XR以降、更に第二世代 iPhone SE を含む) まで拡大されました。

・ARオブジェクト

また、街中など特定の場所にARオブジェクトを配置してカメラ越しに確認することができます。

 

 

デフォルトアプリの変更

iOS 14ではメールとブラウザで使用するデフォルトアプリを変更できるようになりました。例えばメールの送信時に純正メールAppではなくSpark等を、Webサイトへのリンクを開いた時にSafariではなくChrome等の他社ブラウザを…といった形で変更できます。(App側の対応が必要)

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なお、この機能をAppに搭載させるにはApple側での審査が必要です。

 

カメラ

・撮影の高速化

写真撮影が最大90%高速化し、毎秒最大4フレームまで撮影が可能になります。カメラの起動後、最初の一枚を撮影するまでの時間は最大25%短縮され、ポートレート撮影を連続で行った場合は最大15%高速されました。

また高速な撮影を優先することができ、動きの早い被写体などでもより撮影しやすくなりました。

・QuickTake対応デバイスの追加

写真モードから素早く動画撮影を開始できるQuickTakeが、一部の旧モデルでも利用可能になりました。iPhone 11シリーズと第二世代iPhone SEに加え、2018年発売のiPhone XS/XS Max/XRでも使用可能になります。

・解像度の切り替え

ビデオモードでの解像度とフレームレートの切り替えがiOS 14に対応する全モデルのiPhoneで利用可能になりました。

・ナイトモード撮影の補助

iPhone 11と11 Proでナイトモード撮影を行う時、ジャイロスコープを使用してより安定した撮影が行えるようにガイダンスインジケーターが表示されるようになります。

また、撮影をキャンセルすることも可能です。

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・露出ロック

iPhone 11以降のデバイスでは露出補正の値をロックして、カメラのフォーカスと露出を個別にロックできます。

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露出ロック
・新しいオプション

新しいオプションを使用すると、音量を上げるボタンを使用してバースト撮影を、音量を下げるボタンを使用してQuickTake撮影を行えるようになります。

フロントカメラのプレビューを反映させた、左右反転のセルフィーを撮影することができます。

QRコードの読み取り

QRコードの読み取りが強化され、小さなコードや曲がった面に印刷されたQRコードでもより読み取りが行いやすくなりました。

 

メモ

・アプリのデザイン変更

アプリのデザインが変更され、より見やすくなっています。

・ピン固定

ピンで固定されたメモがより識別しやすくなり、また折りたためるようになりました。

・ギャラリー表示

メモのギャラリー表示が可能になっています。

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ヘルスケア

・睡眠計測

ヘルスケアアプリの新機能を使用すると、毎晩の睡眠時間の目標を設定し、就寝と起床の毎日のスケジュールを設定できます。

就寝準備の機能を使用すると、寝る前にリラックスするためのアクションやショートカットを設定できます。

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・睡眠モード

睡眠モードの間、iPhoneはおやすみモードがオンになり、ロック画面が暗くなり、翌日のアラームや(接続されている場合は)Apple Watchのバッテリー残量、設定した睡眠準備ショートカットが表示されます。

睡眠モードは指定した時刻で自動的に切り替えることも、コントロールセンターから手動で開始することもできます。

(ちなみに、睡眠モードの状態で音楽を操作するにはコントロールセンターを表示するか"閉じる"をタップする必要があります)

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・聴覚

対応しているイヤホン (AirPods及び一部のBeatsヘッドフォン) を使用している場合、音量を上げすぎている時にヘルスケアAppだけでなくコントロールセンターにも警告が表示されます。

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天気

天気アプリを使用して気象警報を確認できます。竜巻警報や豪雨警報などの災害の恐れがある警報が発表されている場合、天気アプリと天気ウィジェットに表示されるようになります。(現時点では一部の国のみ対応。日本は対応しています)

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ミュージック

・「今すぐ聴く」タブ

新しい「今すぐ聴く」タブが追加され、従来のFor Youタブから置き換わりました。

ユーザーの好みの音楽を学習し、好みにあった曲やアーティスト等を表示してくれます。

・自動再生

iOS 14ではSpotifyのような自動再生機能が追加されています。

以前はリストの再生が完了すると自動的に停止していましたが、この機能ではApple Musicから似たようなジャンルの曲を自動的に再生してくれます。

・歌詞表示中のスクラブバー

歌詞の表示中に画面をタップするとスクラブバーが表示されるようになりました。

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(左:iOS 13、右:iOS 14)

 

アクセシビリティ

・背面タップ

iPhoneの背面をダブルタップ(もしくはトリプルタップ)して、指定したアクションやショートカットを実行できるようになりました。

アクセシビリティショートカットだけでなく、自分で作成したショートカットやスクリーンショット等のアクションも実行可能です。

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サウンド認識

火災報知器やドアベルなど、特定の種類のアラート音をデバイスで検出した時にユーザーに通知してくれます。

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・拡大鏡

大鏡の機能が強化され、複数枚の撮影やホーム画面からの起動も可能になりました。

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ホーム

・オートメーションの提案

HomeKit対応アクセサリを新しく追加した時、自動的に便利なオートメーションを提案してくれます。

・視覚的な状況表示

ホームアプリに視覚的な状況表示が追加され、最も注意を向けるべきアクセサリを簡単にコントロールできるようになります。

・活動ゾーン

カメラが写す場所の一部を集中的に監視でき、そのゾーンで動きがあった場合に通知することができます。

・顔認識

事前に設定した人をビデオカメラとドアベルで識別できるようになり、その人が写った時に通知することができます。

 

その他

・キーボードの絵文字検索

絵文字の検索が可能になっています。

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・5.4インチデバイスでの拡大表示

iPhone X / XS / 11 Pro で拡大表示が利用できるようになりました。

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・VP9コーデックのサポート

Googleが開発したVP9コーデックに対応しました。これにより、iOS 14と最新版のYouTubeアプリの組み合わせで4K動画のストリーミングを行うことが可能になっています。

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iOS 14の新機能を集めてみました。なお、一部の機能は今後変更される可能性もあります。